
「口から摂るものだけが、人の身体を作るのです」
『みをつくし料理帖』の中で,源斉先生が語った有名な言葉です。
物語では、主人公が幼馴染のために滋養豊かで心を込めた料理を作る場面が度々登場します。
「手に取る側の事を思う」 そのまっすぐに生きる姿勢に心打たれます。
これは僕らがものづくりをする時にいつも中心になければいけない重要な価値観です。
「食とは単にお腹を満たすものではない。」
今や食べ物と心身の関係は新しい常識となっています。
小説は江戸時代が舞台だったと思いますが、
季節の魚や穀物、お野菜をバランス良く使い、精製されていない調味料で料理が行われていた時代の知恵が描かれています。
そもそも物流も人力で冷蔵庫もない時代だから当たり前かもしれません。
インターネットも無い時代です、おそらく人同士の繋がりの数は現在の100分の1です。
しかし互いの関係性や信頼は今よりもずっと深かったかもしれません。
心身が整っているのは常の時代です。
さて、その当時の食事の見直しが進んでいます。
腸内細菌のバランスや「腸活」という言葉が一般的になりました。
背景としてはヒトゲノムの解析が一段落し、研究は次の課題『腸の内側の状態』に集中し始めていると聞きます。
例えば、腸内細菌のバランスで有名なのが、2:1:7の善玉、悪玉、日和見の割合ですが、多様性が重要であるというのが現在のスタンダードのようです。
バランスよく食べて運動して日光を浴びてよく寝る。
これは健康でいる秘訣であり、全て腸内に良い働きをします。
腸内環境が良いとセロトニンという物質が分泌されます。
これは人間の精神面に大きな影響を与える物質であり、「幸せ物質」としても知られています。
脳内では1割程度、その他は腸内で分泌されると言われていて、
この物質は体内で生成される事はなく、口からとるものから取り入れる必要があります。
セロトニンはトリプトファンという物質から合成され、
これは大豆などの豆類のタンパク質を構成する必須アミノ酸の一つです。
さらにトリプトファンからセロトニンを合成するときにはビタミンB6が必要となり、
ビタミンB6を豊富に含むのは玄米や小麦胚芽などと言われています。
お味噌汁と玄米ご飯、お漬物と納豆はとてもバランスの良い食事ということになります。
腸内環境の改善は、心身の健康を支える重要な要素であり、
食事を通じて腸内細菌のバランスを整えることが、現代における健康維持の鍵となっているのかもしれません。
江戸時代の知恵が示すように、自然の恵みを活かしバランスの取れた食生活を送ることが私たちの幸福感や精神的な安定に繋がるのだと思います。
食事の質を見直し、腸内環境を整えることが心身の健康を維持するための基本であると改めて認識することができます。
食事はただお腹を満たす行為ではなくて、身体動かす様々な細胞や細菌に餌をあげるような感覚を持つと食べる事が益々楽しくなるはずです。
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